女性員外監事が語る
輝く未来へ
人生を豊かにする多様な働き方の選択
草野 満代

当金庫の員外監事に就任され、「信用金庫」に対する率直な感想をお聞かせください。

この度、創立100周年の好岡理事長との記念対談から監事就任というご縁をいただきました。

信用金庫は地域の方にとって、思っていた以上にとても近い存在なんだと改めて実感しています。

私は、岐阜県中津川市(旧恵那郡福岡町)の出身ですが、私の故郷のような田舎にも信用金庫はあります。特に地方では、その街で暮らす人や働く人の生活に密着した金融機関であり、いちばん最初に相談したいと思うのが信用金庫だと感じています。

アナウンサーとしてプロフェッショナルなキャリアを積んでこられました。これからの時代に女性が自分らしく働き、仕事を通じてより豊かな人生を送るためには何が大切だとお考えですか。

女性の働き方、生き方を見守り応援したい

地方に生まれ、小さなコミュニティの中で育ち、女性はこうあるべきという固定観念を当たり前のように植えつけられ、何故?女性は我慢しなければならないのか、能力は男性と女性ではそんなに違うのかという反発心を持った幼少時代を過ごしてきました。

しかし、男女雇用機会均等法の成立と同時に東京の大学へ進学し、就職活動の時には、これからの日本社会が大きく変わることへの期待感がありました。これからは女性も総合職として男性と同じように仕事で活躍することができるという夢や希望を強く持ち、社会に出た最初の世代だったと思います。

あれから35年以上経っていますが、常に女性が置かれている職場環境はどうなのか、どんなふうに自由に活き活きと仕事ができているのかを見続け、見守り応援したいと思ってきましたし、岐阜信用金庫の職員さんのことも同じ思いで見ています。

近年では70%以上が共働き世帯となり、結婚や出産後も仕事を続ける女性が多くなっていますが、実際にはまだ生きづらいと感じている方も多いかもしれません。私自身も、既に植えついている固定観念がありますが、一方で、意味もなく制度として残っていることや潜在的な意識が、自分を束縛したり、抑制したりすることが無くなることを心から願っています。

置かれた場所で花を咲かせる

大学卒業後は、東京でアナウンサーとしてのキャリアをスタートできると期待を膨らませていたら、最初の配属は地方局(金沢)。後から振り返ると、何でもやらなければならなかった地方局での経験が、柔軟な考え方や対応力を養い、後に活かされたと思います。

実は、私は最初ディレクター志望でしたが、採用の際にはアナウンサーとして内定をいただきました。その後の異動で、ニュースキャスターやスポーツを担当しました。いつもゼロからの挑戦でしたが、とりあえず、飛び込んでみました。一生懸命やっているうちに、未知なるものとの出会いや様々な人とのご縁があり、この仕事を面白いと思うようになって行きました。与えられた場所で流れに任せ、役割を受け止め頑張ってみた結果、いつの間にかどんどん仕事が楽しくなって行ったのです。

会社員にとっての異動は、自分自身でさえ知らなかった自分の「得意」を知るきっかけでもあり、そこから専門性を磨きプロフェッショナルへの道、生涯の仕事に繋がることもあるのではないでしょうか。

自分の意志で働き方を選択する

私の母校である津田塾大学の創設者津田梅子は、昨年改刷された新紙幣5千円札の肖像画として描かれています。新紙幣記念シンポジウム等の司会として呼ばれることが増え、改めて津田梅子について調べてみたところ、彼女の新たな面を知ることができました。ご存知の通り、日本の女子教育の先駆者であり、8歳で日本初の留学生として渡米しますが、帰国後に米国とのギャップを痛感し、自分の専門性を探すために再度留学をします。生物学という専門性を極めた上で自信を持って帰国し、女子英学塾(現在の津田塾大学)を設立しました。100年以上も前のことなのですが、悩んだり迷ったりしながらも、諦めず努力を続け自分の生き方を模索する姿勢は、実は今もあまり変わっていないと感じます。

私も、アナウンサーが一生の仕事になるとは思っていませんでしたが、結果として、私の専門分野となっています。ぜひ、皆さんにも自分は何で生きていくのか、どんな生き方をしたいのか、常に自分に問いかけていただきたいと願っています。それは必ずしもキャリアアップしてほしいということではなく、自分の意志で働き方を選択して、自分の人生を生きてほしい。自分自身が豊かに生きるためにとても大事なことだと思います。

岐阜信用金庫の女性管理職(代理職以上)比率は10%を超えましたが、今後女性管理職を更に増やすためには、何が必要だとお考えですか。

社会からの要請では、女性の社会進出を推進し、企業に対する女性管理職比率の目標設定や、経営層への女性の登用が求められています。ただ、経営者側や本人にその気があったとしても、様々な事情があり、すぐには叶わないこともあるでしょう。多様な価値観がある中で自分の思いを実現するには、常に思いを言葉にして周りに発信し続け、理解者を増やしていくことが大事なのではないかと思います。

同時に、働きやすい職場環境づくりにおいて、何かおかしいと感じながら古くからの慣習に流されてしまってはいませんか。疑問に思うことがあれば声に出して伝えることで、少しずつ今の時代に添った形に変わっていくのではないでしょうか。まずは、小さなことから変えていくことが大事だと思います。そのプロセスの一翼を担っていることを、一人ひとりの職員の方が意識されることで、岐阜信用金庫の輝く未来に繋がるものと期待し、全力で応援したいと思っています。

(員外監事)員外監事(会員外の監事)は、信用金庫法の定めにより、執行部や金庫から一定の距離を置いた監事を選任し、独立性を高めるべく義務付けられている制度です。

発行:2025.04発行 岐阜信用金庫経営企画部サステナビリティ推進室