トーク127
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が続けば、無理な数値目標ではないと言えるでしょう。キャッシュレス化推進に向けて解決すべき問題 キャッシュレス化推進に向けて解決すべき問題として、次の点が挙げられます。 第1にクレジットカード等利用時のセキュリティの問題です。日本クレジット協会の調査によれば、2016年のクレジットカード不正被害額は約140億円(前年比17.4%増)となっており、年々増加傾向にあります。こうした状況を受け、割賦販売法が改正され、経済産業省は2020年までに国内のICカードの普及率、決済端末のIC対応率ともに100%とすることを目指しています。 第2に、加盟店が負担する決済手数料の負担とクレジットカード等利用によるメリットとのバランス問題です。キャッシュレス決済の裾野を広げるためには、クレジットカード等が利用できる店舗、つまり加盟店を増やしていく必要があります。しかし、利用時に加盟店が負担する決済手数料(加盟店が顧客のカード決済額に応じ、カード会社等に支払う手数料)は、一般的な店舗の最安水準で3.24%程度となっています。小売業の売上高経常利益率(経常利益÷売上高×100)は平均して3%程度と言われており、これを勘案すると加盟店の決済手数料の負担は大きいものと考えられます。同水準の利益を確保するためには、カード利用導入による売上増加対策または単価の見直しが迫られます。 第3に、インバウンド(訪日外国人旅行)対応の問題です。モバイル決済に慣れた外国人を受け入れるには、QRコードや非接触型ICカード(無線通信技術NFC Type A/Bが世界の主流)を読み取れる決済端末を準備する必要性にも迫られます。日本では、無線通信技術NFCはType Fが主流となっており、インバウンド対応するためには、Type A/Bを導入する負担が発生します。具体的な推進策が今後の課題 このような問題をいかに解決するかが、「未来投資戦略2017」で掲げられた数値目標達成のポイントとなるのではないでしょうか。だだし、現状は特効薬が見出せない状況であり、具体的な推進策は今後の課題と言えるでしょう。キャッシュレス決済が進展すれば、現金の取扱い(集計、両替等)に伴う従業員の手間の軽減、データ管理の大幅な簡素化、分析の高度化といったメリットが享受できます。そして、それを消費者にサービスとして還元できれば、顧客増加に結びつき、事業の発展にもつながります。 最後に、多様化する決済手段として、これまで述べたクレジットカード、電子マネー等とは概念が異なる仮想通貨をご紹介します。 仮想通貨は、法定通貨と違い、公的な発行主体や管理者が存在しないデジタル通貨です。代表的なものは「ビットコイン」であり、不特定の者に対して代金の支払い等に使用でき、かつ円やドル等の法定通貨と交換ができます。なお、2017年4月に施行された改正資金決済法により、仮想通貨交換業は監督当局の登録を受けた事業者しか行うことができません。こうした中、「ビットコイン」で決済できる大手量販店も出始め、裾野が広がりつつあります。 仮想通貨を支えているのは、「ブロックチェーン」と呼ばれる仕組みです。この仕組みによって、管理者が存在しなくても、ネットシステム内で資金移動を確定することができるのです。ただし、注意は必要です。法定通貨は、通貨当局の監督の下、価値が保証されていますが、仮想通貨は、それぞれの仮想通貨取引所で提示される相場価格がその仮想通貨の価値となります。つまり、価値が上がることもあれば、下がることもあるのです。 (イノベーション開発室 古山 雄一郎)5キャッシュレス社会は実現するか

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