トーク126
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G…御社の成り立ち、これまでの歩みについてお聞かせください。 当社は今から20年前の平成8年に私が創業しました。元々、私はシリコーン製造会社に勤務しており、営業としてシリコーン加工メーカーに出入りしていました。シリコーンは様々な用途があり、私達の身近なところでも目に見えぬ活躍をしています。例えば、「化粧品のファンデーションの伸びを良くする」「タバコのフィルムを箱からはがれやすくする」「注射針をコーティングし、痛みをやわらげる」などはシリコーンがあって実現できるものです。また、自動車の耐熱、傷つき防止にも利用されています。 このように360度の業界で必要不可欠な素材として、大変裾野が広いのです。ちなみにシリコーンとシリコンはよく似ていますが、シリコンはケイ素のことであり、自然界に存在するものです。一方、シリコーンはケイ素樹脂のことであり、ケイ素を含む有機化合物の総称で天然には存在しないものです。 こうして、勤務先でシリコーンを取扱っているうちに「こんな風に使ってみたら、もっとおもしろいものができるのに」と思うようになりました。こうしたアイデアが積り、ついに「シリコーンでものづくりにチャレンジしたい」と一念発起し、起業することにしたのです。G…起業された当初はどうでしたか。 サラリーマンを辞め、起業したものですから、最初は自宅を事務所とし、ファブレス企業としてスタートしました。ファブレスとは自社工場を持たず、外注生産をする形態のことです。その頃、私は40歳そこそこであり、子供が中学生、高校生でしたから、何かとお金がかかる時期でした。家族も当然心配しましたが、これまでに培ったシリコーンの知識を武器に成功できる自信がありましたし、万が一、うまくいかなくても、またサラリーマンに戻ればいいやと考えていました。G…ものづくりといってもいろいろあると思いますが、どの分野(製品)から始められたのですか。 まず、サラリーマン時代に関わりのあった自動車、家電関連への参入が頭をよぎりましたが、非常に大きな市場であるため、そこで勝負するのは資本面から考えて難しいと判断しました。また、自動車メーカーなどを相手にするとどうしても受動的になってしまい、主体性が発揮できないイメージがありました。そこで思案をした結果、今後成長が期待でき、自分たちがプロデュースできる通販向け美容・ヘルスケア分野から始めることにしました。G…自分たちがプロデュースできるというのは具体的にどういうことですか。 当時、この分野には図面やスペック(仕様、性能)といったものがほとんどなく、お取引先の要望も「こんなものをつくってほしい」というように漠然としたものでした。つまり、素材として使うシリコーンの選定から製品化するまでのコストに至るまでほとんど自分たちが主導的に決定できるということです。まさにニッチ市場の醍醐味といえるでしょう。G…目のつけどころが良く、順調に事業がスタートしましたね。 最初の10年間は社員を2名入れただけであり、小規模体制でやっていました。私も欲張らず「サラリーマン時代の収入が確保できればいいや」という感覚でした。しかしながら、時が経つにつれ、だんだんと「起業する意義は何だったのか」と考えるようになり、悶々とシリコーンは私達の身近なところで活躍をしている自分たちがプロデュースできる通販向け美容・ヘルスケア分野からスタート■平成28年7月に新設された タナックテクノロジーセンター外観7SPECIAL TALK 株式会社 タナック

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