トーク125
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小説「下町ロケット」にみるこれからの「知的資産」・「知的財産」の活用についてテーマ「知的資産」・「知的財産」とは 最初に今回のテーマにある「知的資産」と「知的財産」について整理をします。 図表1をご覧ください。独立行政法人 中小企業基盤整備機構作成の「事業価値を高める経営レポート(知的資産経営報告書)作成マニュアル改訂版」によれば、「知的資産」に含まれるものは、特許権、著作権、ブランド、ノウハウ、人的資産、顧客とのネットワークなどと幅広く、そのうち、特許権をはじめとした法的に保護される権利を「知的財産権」と定義しています。 この「知的財産権」のうち、特許権・実用新案権・意匠権・商標権の4つを「産業財産権」と呼び、特許庁に出願・登録することで、一定期間独占使用できることになっています。例えば、特許権は特許法に基づいて発明を保護するものであり、存続期間は出願から20年(一部、25年に延長)となっています。 ところで、特許権を持つ企業は他の企業と比べてどのような強みがあるのでしょうか。特許庁が実施した調査によれば、特許を取得している中小企業の売上高営業利益率は3.5%となり、特許を取得していない中小企業の水準である1.8%を上回っています。また、大企業の水準である2.6%をも超えています。 さらに特許を取得している中小企業の従業員1人当たり営業利益は96万円となっています。一方で特許を取得していない中小企業は29万円と約3倍の差があり、特許を取得するかしないかでは、収益面で大きな差が出ることが分かります。 では、もう少し具体的に知的財産戦略の重要性について、当金庫職員向け研修で行われた講演をもとに成功事例を交えながらまとめましたので、以下をご覧ください。小説「下町ロケット」のモデル弁護士が解説する!中小企業の知的財産戦略と経営戦略論について 当金庫は先日、職員向けに中小企業の知的財産戦略をテーマにした研修を本店8Fの大ホールで開催しました。この研修会では、小説「下町ロケット」に登場する敏腕弁護士のモデルになった内田・鮫島法律事務所の弁護士鮫島正洋先生が講演し、職員約200名が知的財産戦略の重要性を学びました。 職員の多くが「中小企業経営にとって知的財産がどのように役立つのか」という疑問があっただけに鮫島弁護士の実例を交えた多岐に渡るお話は参考になりました。 例えば、「中小企業の現場で知的財産が役に立たないかというと、そんなことは全くなく、技術開発に力を入れて特許を取得することで、企業間の競争でも優位に立つことができます。また、社員のモチベーションアップにつながり、技術力があるということで金融 直木賞受賞作品 池井戸潤氏の小説「下町ロケット」は中小企業の技術力で大企業に立ち向かい、勝ち抜いていくストーリーが共感を呼び、テレビドラマでも大ヒットしました。 この小説に登場する中小企業が大企業と渡り合うことができたのは、技術開発を地道に続け、その技術を特許として取得していたことが大きかったといえます。 今回の「情報の泉」では『小説「下町ロケット」にみるこれからの「知的資産」・「知的財産」の活用について』をテーマに企業における今後の知的財産戦略のあり方を皆さまと一緒に考えていきたいと思います。10(図表1)「知的資産」と「知的財産」との関連性イメージ知的財産権EX) 特許権、実用新案権、著作権知的資産EX) 人的資産、組織力、経営理念、顧客とのネットワーク、技能等知的財産EX) ブランド、営業秘密、ノウハウ等無形資産EX) 借地権、電話加入権等知的資産出典:独立行政法人 中小企業基盤整備機構「事業価値を高める経営レポート(知的資産経営報告書)作成マニュアル改訂版」P4提供 小学館

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