トーク123
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スマートフォンやめたら5,000円G…以前新聞に掲載された岩田社長のコラムのなかに、パソコンなどのデジタル機器が持つ負の側面についての記載があったと思うのですが、そのあたりについてまず、お話をお聞かせください。  元々、パソコンなどのデジタル機器が事務や製造現場に普及し始めた20年前から便利であるという「正の側面」を認めてはいましたが、一方で、「負の側面」を強く感じていました。例えば、パソコンを使ってまとめた表は大変見やすくきれいですが、コピーを繰り返し貼り付けたいわゆる「コピー&ペースト」は作り手の記憶に残りにくいといったことです。手書きであれば、資料を完成させるうえであれこれ考えますので、記憶にも残りやすいですし、今後の戦略の一つも生まれてきたかもしれません。さらに、CAD(キャド)なんかも大変便利なものですが、今まで人の手によって行われてきた設計作業をコンピュータが支援してしまい、技術、スキルが身につかないと思ったため、当社では、設計経験の浅い人間には使わせないようにしています。 また、パソコンを導入した頃から従業員同士のコミュニケーション不足を懸念しており、かねてから、やり取りを全てメールで済ますやり方は危険であると思っていました。私は、面談による「フェース・トゥ・フェース」がコミュニケーションの基本と考えておりますので、特にクレーム処理などを、メールだけで済まそうとする従業員には、きつく注意をしました。相手が怒っている時は、直接訪問し、相手の顔を見て、話をするのが普通ではないでしょうか。パソコンに頼りすぎるとこうしたあうんの呼吸というか常識が身につかないと危機感を感じていたのです。G…以前からデジタル機器の負の側面に相当な危機感を持たれていたようですね。御社の取組みの一つにアナログ奨励で従業員の「考える能力」や「雑談(コミュニケーション)能力」を強化する。新聞などで取り上げられている「私用でスマートフォンを使用しない従業員には毎月5,000円を支給する」という「デジタルフリー奨励金制度」がありますが、導入の経緯などを教えていただけますか。 デジタル機器の全てが悪いと言っているのでは決してありません。便利になれば、当然得るものはたくさんあります。実際に、当社でも出先で取引先と図面について話し合う営業マンにはスマートフォンを支給しています。しかしながら、失ったものも多いはずです。先ほどお話したことはデジタル機器が普及したことで起きる弊害だと思っています。 この「デジタルフリー奨励金制度」の導入を思い立ったのは、昼休みの休憩時間にずらりと並んでいる従業員の多くが会話をすることもなく、スマートフォンでゲームやメール、インターネットを見ている光景を目の当たりにしたことがきっかけです。「この異様な様子は何だ」と思いました。以前は、昼休みは当たり前のように皆が談笑し、いろいろな情報が飛び交っていました。そこで耳にする情報が従業員の成長につながり、人材育成の一端を担っていたのです。 振り返りますと、創業以来、厳しいなかにも当社が生き残ってきた原動力は、そんな“社内の対話力”にあったと思います。当社が取扱う製品は産業用機械に使用されるほんの一部品で、セットカラー、センサブラケットなど一般の方々にはほとんど馴染みのないものです。1個からの特注対応もあり、柔軟な製品開発力が求められます。そうした製品開発のアイデアの源は間違いなく従業員同士の対話にあったのです。 このまま、この状況を放置しておくとせっかく築き上げた当社の強みが希薄になり、経営に支障をきたすかもしれないと強い危機感を抱きました。こうして2013年7月に従業員が私用でスマートフォンを使用しない場合、月5,000円を支給する「デジタルフリー7株式会社 岩田製作所

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