トーク123
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中小企業こそがCSRに適している3つの理由 こうしてみると、CSRは大企業だけではなく、どの企業にも重要なものだということが分かります。むしろ、中小企業の方がCSRを重視した経営を行う必要があると考えられます。以下、中小企業がCSRに取組むメリットを3つご紹介します。①地域社会の問題に気が付きやすい中小企業は、経営者や従業員、取引先が地域住民である場合が多く、そのため地域社会が抱えている問題や「こういうものがあったらいいのに」という部分に市民の目線で反応することができます。こうした「気付き」は今後の事業に結び付く可能性が高いのです。②スピード感を持ってCSRに取組むことができる従業員数が限られているため、経営者の考えが浸透しやすく、経営者が「CSRに取組む」と決めればすぐに実践できます。従業員にCSRを理解させ、社内調整をして部署をつくるといった手順を省くことができるため、CSR活動の導入と、社会が抱える課題に素早く対応することが可能になります。③中小企業の発展=地域の発展中小企業は地域に密着しているため、地域に役立つ商品やサービスの提供が取引先の信頼、従業員の自信・モチベーションの向上につながり、これが業績、利益に反映されます。こうした好循環は地域からの尊敬や取引先の拡大、優秀な人材の獲得に結び付きます。さらに地域におけるメセナ活動などが加わることで地域との絆が一層深くなり、地域になくてはならない企業に発展していくことができるのです。 このように、地域の問題を解決し、地域の発展に貢献することを企業活動の一部にできれば、地域から必要とされる企業となり、長期間にわたって企業を存続させることが可能になるという好循環が生まれます。実例から学ぶ企業経営とCSR 最後に、今回インタビューを通じてお伺いした話を基に企業経営とCSRのあり方を考えてみます。 一社は、地域から依頼を受けて障がい者を雇用することになりましたが、障がい者の自立支援を促すために職業訓練や就業支援が実施できる施設をつくり、また、障がいを持つ従業員の目線に立って、仕事がしやすい環境を整備し、生産性を高めることができました。重度の障がい者や精神疾患を抱える障がい者が一般的な企業に馴染んで働くことは非常に難しく、雇う側の負担も大きいため敬遠されがちだと言われています。そんな社会の問題を創意工夫で解決し、自社の利益につなげることができました。これこそ、CSV経営そのものであり、自社の状況に応じたCSR活動は、他の企業にはない個性を生み出しました。 もう一社は、デジタル化する社会の中で従業員の「考える能力」や「雑談能力」の衰えに危機を感じ、スマートフォンを使用しないことを奨励する制度を導入しました。自社の強みを従業員同士の対話から生まれるアイデア力だと分析していたからこそ、スマートフォンによる弊害という問題に対しユニークな対策を取ることが可能となりました。結果、失われそうになっていたコミュニケーション能力、従業員のモチベーションが向上しました。また、地域でのメセナ活動を通じた社会貢献活動にも尽力しており、地域からの高評価にもつながっています。 両社のCSR活動はそれぞれ異なるものですが、共通して言えることは、取引先と従業員のことを考え、大切にすることで、業績を伸ばし、利益を上げ、地域社会から評価されるということです。このサイクルが循環し、永続的な企業活動につながっていくのです。 CSRは「利益に結び付かない、追加的なもの」と思われがちですが、決してそうではありません。CSRは企業経営を変える力を秘めているのです。13

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