トーク121
10/20

 「元気な挨拶をする」、「お待たせすることなくドリンクや料理を運ぶ」、「料理を出す順番を考える」という基本的なことは言うまでもありませんが、例えば、「お酒を置いた瞬間、1秒間の間を持ち、丁寧にお渡しする」、「お客さまと目が合ったら、ニコッと微笑む」といったように、しぐさ一つ一つにも気配りができるよう教育しています。お客さまからは、「楽しい時間を過ごせました」と感謝の手紙をいただくことがありますよ。G…こうしたきめ細やかなサービスには、それ相応の従業員教育が必要不可欠かと思いますが、その辺りについてもお話しいただけますか。 全従業員にはまず「元気バイブル」と呼ばれる企業理念を徹底的に叩き込みます。また、「私が求めるあるべき姿」を書面化し、明確にすることで、人間力アップを図っています。具体的には、「人間力70の質問」、「店長評価シート30の質問」というものです。 「人間力70の質問」は、全従業員が人間力アップに必要な70項目ができているかどうかを毎月自己チェックするものです。従業員は大変かもしれませんが、毎月きっちりとチェック表を提出する決めとなっています。また、「店長評価シート30の質問」については、従業員が店長を30の観点から評価するもので、店長の資質を向上させるのに大きく役立っています。 こうした取組みに加え、毎月一回は、研修会を開催しています。これは、私を含め、従業員同士がコミュニケーションを図る絶好の機会となっています。研修会では、私が強化したいと考えているテーマ(「感謝」、「仲間」など)を選び、そのテーマについて話し合います。忌憚のない意見がたくさん出て、皆のモチベーションアップにつながる効果があります。コミュニケーションの量を増やすことが、職場環境をよりよくする鍵であると思っていますし、私自身、従業員のみんなが大好きで仕方がありませんから、少しでも多くこうした場を設けたいというのが素直な気持ちですね。その他にも、定期的に店長と従業員が面談することを義務付けていますし、人として大切にしてもらいたい考え方(「原理原則」、「感性」、「礼」など)を毎月手紙にし、給与袋に入れることも昔から継続しています。 「元気、人を動かすということはどういうことかわかるか。」 この問いかけについては、恥ずかしながら何も答えることができませんでした。しばらくして、父親はこう言いました。 「誰よりも早く来て、誰よりも遅く帰ることだ。」 つまり、父親が言いたかったのは、口だけではなく、自ら率先して行動しなさいということでした。ハッとさせられました。 その後は欠かさず、父親のアドバイスどおり「誰よりも早く来て、誰よりも遅く帰る」という至ってシンプルなことなのですが、徹底してやってみることにしました。そうしたところ、私の考えが従業員にスムーズに浸透していきました。G…お父様の存在は大きいですね。  そうですね。基本的には、店舗経営については、ほとんど口出しせず、自由にやらせてもらえるのですが、大きな失敗をしそうになると必ず影で父親が支えてくれました。本当にありがたいと思っています。私も自分なりの考えがあるので、本音としては、信念を曲げたくないのですが、経営者としての父親を心から尊敬していますので、今でもいざという時のアドバイスは素直に聞くようにしています。G…今では「炙一丁」にとどまらず、「寅"衛門」「寅"ちゃん」などの居酒屋を手広く展開されていますが、独自のサービスが奏功されているのですね。その辺りについてお話しいただけますか。 一言で言えば、アルバイトを含む全従業員がきめ細やかなサービスができることではないでしょうか。8SPECIAL TALK

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です