トーク119
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昭和56年(1981年)に、それまでの脳血管疾患に代わって悪性新生物(癌)が死因の第1位となりました。その後、心疾患・脳血管疾患・肺炎等の他の疾患の死亡率が横ばいか緩やかな上昇を示すのに対し、癌は235.2(人口10万対)と上昇傾向が続き、現在では第2位の心疾患(116.8)を大きく引き離しています。平成21年(2009年)の死亡数114万1865人中、癌による死亡数は34万4105人であり(図1)、死亡数の30%が癌によって亡くなる時代です。罹患する可能性の高い臓器は、男性で胃・大腸・肺・前立腺・結腸の順であり、女性では乳房・大腸・胃・結腸・肺の順です。一方、死亡する可能性の高い癌は、男性で肺・胃・大腸の癌であり、女性では大腸・肺・胃の癌です。このような多くの種類の癌に対し、手術切除、放射線、抗がん剤等と、多くの治療方法があります。これらの中で放射線治療は、治療中の痛みが無いのが特徴で、特に最近では装置の進化に伴い、より副作用の無い、より効果的な癌治療が行われています。 これまでの癌放射線治療は、多くはコバルトなどの放射性同位元素から発生するガンマ線と、加速器から発生するX線で行われ、これらは光子線と呼ばれています。光の性質を持っており、体内に入射した時の線量が一番高く、その後、距離の二乗に比例して強さが減衰しセンター長 溝江 純悦 氏【略 歴】 ■1972年北海道大学医学部卒業■1973年青森県立中央病院医員■1974年北海道大学医学部附属病院助手(1983年 スイス国立核研究所にて負パイ中間子線治療に従事ConsultingPhysician)■1985年帯広厚生病院医長■1989年北海道大学医学部附属病院助教授■1991年独立行政法人放射線医学総合研究所障害臨床研究部室長■2003年同センター病院長■2010年イタリア国立粒子線がん治療センター(CNAO)SupervisingPhysician.■2012年現職名古屋陽子線治療センター講演録陽子線治療に関する講演会図1:主要死因別死亡者数(独立行政法人国立がん研究センターより)悪性新生物心疾患(高血圧性を除く)脳血管疾患肺炎353025201510507121721(万人)62年昭和2年平成老衰10

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