トーク119
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させて、最適な医療施設へ搬送するものです。このシステムの鍵となるのが今お話しした「MEDICA」カードであり、患者さんと救急車やドクターヘリ、病院を結ぶ命綱です。 救急現場において、患者さんから日頃服用している薬や病歴を正確に聞き取りするのは、困難を極めます。そこで、普段から氏名、生年月日、性別、血液型、病歴、投薬歴といった個人情報と16桁の番号が記録されている「MEDICA」カードを保有することで、いざという時、救急隊員がこのカードを特別な端末にかざすだけで、処置、治療に必要な情報が瞬時に引き出すことができ、命が助かる確率がより高まるのです。個人情報等のセキュリティが心配ではないかという声もありますが、このカードは、端末がないと読み取りができないようになっており、端末の管理を徹底することで、解決ができるものと考えています。 カードを読むための端末機器は現在、岐阜県内の全ての救急車に配備しており、全国で1万5千人のうち岐阜県で1万2千人以上の方がカードを所持しています。カードがあることで、救急隊員の現場における滞在時間が平均で11.9分から10.7分に短縮されるなど、1秒を争う闘いの中で、10%以上も時間短縮が図れることで大きく救命率を上げることが想定できます。 しかしながら、「MEDICA」カードを含む「GEMITS」システムは、まだ世間一般に浸透していないのが現状で、認知度の向上、システムの運用や維持のための経費をいかに確保するか、等の課題があります。そこで、こうした課題を解決し、普及率を向上させたい一心で、岐阜大学の学内ベンチャーとして「株式会社ジェムシス」を設立しました。これまでに培った救急医療における様々な知見を活かし、最高のサービスを展開したいと考えております。ちなみにこの会社の名前は、さきほどの救急医療情報共有支援システム「GEMSIS(ジェムシス)」が由来となっております。また、木沢記念病院や松波総合病院などの協力も得て、多方面から浸透を図っていきます。有識者に聞くんが一命を取り留める確率は高いのです。問題は、患者さんが最適な医療施設に収容できない場合です。 救急医療の分野では、医療施設に到着前からの患者情報が不可欠である上、それ自体が高い重要性を持つのです。また、医療施設間や医師間の連携も重要です。救命率を上げるために最も重要なことは、最適な治療が受けられる医療施設へ出来るだけ早く患者を搬送することなのです。 こうしたことを可能にする方法の一つとして、患者さんの発生から通報・搬送・受け入れに至る過程をシステムで支援することが必要であると考えます。例えば、救急隊員が患者情報をシステムに入力し、即座に最適な病院が指示される仕組みがあれば、より質の高い救急医療が提供できるのではないでしょうか。 こうして、私が中心となってスタートしたのが、「救急医療情報共有支援システム(Gifu Emergency Medical supporting Information System)」です。名称の頭文字をとって、「GEMSIS(ジェムシス))と呼んでいます。「GEMSIS」は、救急隊員が得た患者情報と医療施設の状況をマッチングして、最適な医療施設とアクセス手段を指示するシステムです。 このシステムをさらに具体化させた取り組みが「救急医療支援情報流通システム(Global Emergency Medical support Intelligence Transport System)」です。名称の頭文字をとって、「GEMITS(ジェミッツ)」と呼んでいます。IT技術を活用し、現場の救急車と医療施設とを結んで、患者さんを迅速に搬送、処置できるようにしたものです。つまり、救急車に搭載したIT機器と既往歴等の患者情報が登録された「MEDICA」と呼ばれるICカードを活用して、患者情報を情報センターに送信し、情報センターで得られた病院の情報(医療設備の状況はどうか、手術室や処置室で対応している医師は何名か、控え室で待機中である医師は何名か、などを即時に把握する)とマッチング■岐阜大学病院8

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