トーク118
6/24

時、技術開発を託した社員にこう話しました。 「ガサ電鋳に開いている穴がもっと微細になれば、成形品がきれいにできるかもしれない。1年かかっても2年かかってもいいので穴の直径を0.1から0.2ミリにできないか。」と。その後、約1年の研究開発の末、微細な穴をコントロールする技術を確立、直径0.1ミリにコントロールされた無数の通気孔が開いた金型を完成させることができました。これが『ポーラス電鋳』の始まりです。 この『ポーラス電鋳金型』の上に加熱で柔らかくした樹脂シートを載せ、金型の裏側から空気を抜くことで樹脂シートと金型を密着転写させ、より精密に成形することが可能となります。自信を持って、新技術の導入に積極的に取り組んでいただけそうなある自動車メーカーへ持ち込んだところ、「エポキシ樹脂でほぼ同程度の精度で、既に開発しているよ。」とあっさり言われてしまいました。大変悔しかったので、今度はドア一枚分の金型を作り、成形品を持ち込みました。 最初は2名にプレゼンテーションをしていたのですが、出来栄えに驚いたようで、やがて関連部署の人なども集まり、10名ほどになっていました。想像以上の反響になったことを今でも覚えています。その後はスムーズに採用に至り、その自動車メーカーからは、常時3~4名の人員支援までしていただき、技術のノウハウが着実に蓄積されました。この時、その自動車メーカーの社員の方々の熱意には、本当に心が揺さぶられ、『この人たちのために頑張ろう』と奮い立ち、仕事に励みました。従来の成形方法と比較しても、生産性が向上するため製造コストは2割減になるなど、皆がこの技術への可能性を信じてやまなかった結果だと思っています。G…御社にとって『ポーラス電鋳』は画期的な発明だったのですね。その後の会社運営はどうでしたか。社長…その自動車メーカーの手厚い支えに対する恩義もあり、その後数年間は他メーカーへ『ポーラス電鋳』の売り込みを全くしませんでした。企業ルポましたが、あの社員が1年半ずっと研究してくれたお蔭で、良質な金型ができるようになりました。この時にやっと、電気鋳造の世界で生きていけると自信を持つことができたのです。実際、この電気鋳造技術によって製造した金型をユーザーに見せると、その質の良さはすぐに伝わり、これを機に仕事量は徐々に増加していきました。画期的な大発明『ポーラス電鋳』G…こうして御社の事業も軌道に乗り始めたのですね。その後、御社の技術基盤となる『ポーラス電鋳』が開発されたと聞きました。この『ポーラス電鋳』について教えていただけますか。社長…『ポーラス電鋳』とは、通気性のある、という意味でKTXがネーミングしたものです。(ポーラス電鋳はKTX株式会社の登録商標です。)これは、一般の電気鋳造金型に通気孔(直径0.1~0.2ミリ程度)を空ける技術であり、この技術で製造した金型には、プラスチック製品などの成形において、真空技術と組み合わせると、モデルの形状、模様、表面の凹凸の『転写』を忠実に 、かつ、スピーディー、低コストで行うことができる といった大きなメリットがあります。 開発のきっかけは、あるユーザーからサンプル製作を依頼されて、失敗して直径3~4ミリの穴がボコボコと開いた電気鋳造金型ができたことでした。そういう製品は『ガサ電鋳』と呼ばれ、とても納品できない、不良品の代名詞でした。しかし、ちょうどヨーロッパで通気孔のあるエポキシ樹脂の型に柔らかいシートを吸引し、そこにウレタンを流して自動車のドアを造っていたのを見た時に、その『ガサ電鋳』を思い出し、『ミリ単位の大きな通気孔ではなく、もっと微細な通気孔を開けた電気鋳造金型を製造すれば面白いかもしれない・・・。』とひらめくものがありました。 帰国後すぐに工場へ向かうと、 あのオイルショックの■本社所在地:愛知県江南市安良町地蔵51番地■創 業:昭和40年1月■資本金:9,390万円■従業員数:156名■事業内容:自動車、航空機、住宅設備、医療、レジャー関連の試作金型および量産金型の設計と製造■関連会社:KTXThaiCo.,Ltd.KTXPrecisionThailandCo.,Ltd.KTXAmerica,Inc.KTX-MoldKoreaCo.,Ltd.■本社外観会社概要4

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer9以上が必要です