トーク118
17/24

「相続時精算課税制度」を選択した場合、生前に2,500万円まで納税することなく贈与することができても、結局相続時にすべて精算してしまうことになるため、単なる課税の繰り延べ効果しかないではないかと思うかもしれません。 しかし、そもそも贈与者の財産が相続税の基礎控除額(平成24年4月1日現在:5,000万円+1,000万円×法定相続人の数。例えば、法定相続人が3人の場合、基礎控除額は8,000万円)以下のケースであれば、死亡時の税金も発生しません。そのため、こうしたケースであれば、「暦年課税制度」よりも「相続時精算課税制度」を選択し、利用した方が贈与税の負担をすることなく、生前贈与ができ、結果的に相続税も課税されません。 また、仮に相続税が発生するようなケースであっても、相続時に加算される贈与財産の価額は「贈与時の価額」となっているため、成長過程にある会社においては、オーナーが比較的株価の低い段階で「相続時精算課税制度」を使って、子に株式を贈与しておくという事業承継対策が考えられます。 例えば、今後成長が見込める会社の株式で、現段階の株式の価額が3万円だったとします。オーナーがこの株式を価額の低い段階で子に贈与しておけば、相続時に仮に株式の価額が10倍になっていたとしても、相続財産に加算される金額は相続時の価額30万円ではなく、贈与時の価額である3万円となりますから、税務上有利となると考えられます。 株式に限らず、将来値上がりが見込める資産についてはこの制度を利用することによって、値上がり益についての相続税負担を軽減することができます。○将来、価格の上昇が見込まれる財産:上場株式や不動産で将来時価の上昇が見込まれるもの。 取引相場のない株式で将来評価額の上昇が見込まれるもの (例えば、好業績の会社や業績アップが予想される会社の非上場株式等)○収益を生み出す資産:賃貸用不動産、事業用資産など しかし、将来値下がりする可能性のある財産についてこの制度を利用してしまうと、相続の際に贈与時の価額(値下がりする前の価額)で相続税が計算されることになりますので、上記の例とは逆に税務上不利になることもあります。よって、「相続時精算課税制度」の選択については十分ご注意ください。企業の経営上の課題解決に向け、当金庫の中小企業診断士や1級ファイナンシャルプランニング技能士が、お近くの支店職員とともに、専門家や地域の中小企業支援団体の協力を得ながらご相談に応じます。是非ともご活用ください。「相続時精算課税制度」による事業承継対策について15

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer9以上が必要です